マエシュンの部屋

自分の興味・関心を何となく綴るブログ

魔法少女の変遷

魔法少女とは従来、人々を特殊な魔法の力で

助けて、勧善懲悪を成す正義の存在である。

その歴史は古く、魔法少女ものの作品の始ま

りは1966年に東映動画により制作された『魔法使いサリー』とされる。

f:id:maeshun819:20171026212706j:plain

魔法使いサリーは当時の女の子達が目を輝か

せ、憧憬を抱いていた存在かもしれない。魔

法の国からこっそり人間界にやってきた魔法

少女が、空飛ぶ箒にまたがり、人々の悩みを

魔法によって解決していく。その姿は現実の

世界にはないもので、少女達の一つの成長の

目的地として、『魔法使いサリー』は魔法少

女というジャンルの土台を築き上げたといえ

る。

f:id:maeshun819:20171026213324j:plain

そして、1992年になると後の魔法少女アニメ

の鉄則とも言える「複数人の魔法少女による

正義執行」を作り上げた、『美少女戦士セー

ラームーン』が放送開始される。主人公月野

うさぎが、ひょんなことから黒猫ルナの力に

より、セーラームーンとして悪の組織と戦う

ことになる。『魔法使いサリー』のような戦

いは特に存在せず、人々の悩み解決のために

奔走していた魔法少女の姿は、セーラームー

ンにより「コンセプトのある少女達」による

「世界平和のための戦い」を描いたものへ変化

していったのである。

f:id:maeshun819:20171026213915j:plain

2000年代に突入すると、魔法少女アニメの鉄

則を編み出した『美少女戦士セーラームー

ン』の要素を受け継いだ、『プリキュア』シ

リーズが次々と放送されていく。始まりは

2004年にアニメ放送された『ふたりはプリキ

ュア』である。二人のヒロインがそれぞれキ

ュアブラック、キュアホワイトに変身して、

悪の組織ドツクゾーンの野望を阻止するため

バトルしていく。ストーリーを追っていくだ

けで、セーラームーン魔法少女像を強く投

影していることが分かる。プリキュアシリー

ズは反響を極めて大きく、幼稚園から小学校

低学年程度の女児に対して「好きなアニメは

何?」「なりたいキャラは何?」といった質問

に対して、プリキュアシリーズを答える子は

多数を占めると言われる。それほどまでに、

プリキュアシリーズの影響力はとても力強い

ものがあると感じ取れる。

f:id:maeshun819:20171026215146j:plain

しかし、魔法少女の概念を根底からひっくり

返す作品が2010年代から顔を覗かせることに

なる。その作品とは『魔法少女まどか☆マギ

カ』(以下まどマギと略称)である。こちらの

作品はシャフトというアクの強い独特な映像

表現を駆使した作品作りに定評のある制作会

社が担当したオリジナルアニメ作品で、2011

年に1クールに亘り放送された。これまでの

魔法少女の通則と言えば、「魔法少女達が世

界平和のために戦う」「作品の雰囲気は全体的

に明るめ」なのが当たり前とされ、何より子

ども(特に女児)向けな色合いが強かった。だ

が、まどマギはとても子ども向けとは言えな

い残酷な世界観が展開されている。映像制作

集団イヌカレーによる独特な敵の描写、本来

ありえなかった魔法少女の死を描く驚愕の展

開。まどマギ魔法少女達は自身の叶えたい

願いの代償として、自身の命をソウルジェム

という代替物に宿して第三者に管理される。

魔法少女達は、自分自身の命がいつ消えても

おかしくない過酷な状況の中で、叶えたい願

いのために敵である魔女を倒し続ける。彼女

達の存在意義は、そうした苦悩の中にしか見

いだせないのである。

まどマギ以降に登場してくる魔法少女ものの

作品は、まどマギのようなダークな要素を詰

め込んだものが多くなっていく。2016年に放

送開始された『魔法少女育成計画』では、

(魔法少女育成計画)と呼ばれるゲームアプリ

からリアルに魔法少女として人々を助けるこ

とになった少女達が、やがてアプリ運営の者

から魔法少女の数を減らすことを告げられ

る。やがて自分自身の身を守るため、魔法少

女達はお互いに戦いに身を投じることにな

る。従来相対することのなかった魔法少女

士が戦うというストーリーは、正しくまどマ

ギのような暗く淀んだ印象を視聴者に強く植

え付ける。その他にも、『魔法少女オブジエ

ンド』や『間違った子を魔法少女にしてしま

った』など、2011年のまどマギ放送を契機に

嘗ての魔法少女作品像は変容され、明るさの

削がれた暗めの世界観を描いた作品が多くな

っているのである。

魔法使いサリー』から始まった魔法少女

系譜は、明るく正義のために戦う魔法少女

多く描いた「陽」の時代から、まどマギに代表

されるような、人の生死に関わり常に不穏な

空気が作品を支配しているような、「陰」の時

代に移り変わりつつある。それは、これまで

子どもが見るものと考えられてた魔法少女

のの作品が、大人向けの作品へと変化して、

より多様なニーズを生み出し続けているのか

もしれない。