リーダーの資質とは
よく、リーダーに求められる条件として、以下の項目を挙げる人が多い。
①先頭に立って、他のみんなを先導していく
②大多数の意見をまとめて、一つの明確な結論を案出する
③個の利益ではなく、全体の利益を生もうとする
いずれも、多く自己啓発書やビジネス書などを読み漁っていると、これでもかと読み手
に訴えかけてくる主張である。
確かに、曲がりなりにも間違った主張はどこにもない。
①→リーダーが先頭に立たないと、配下の集団は無統制状態になる
②→意見を散らばったままにさせると、まとまりや一貫性に欠ける
③→全体の利益向上が個の資質を高める基盤となる
①~③のどの主張も行動の後の結果の良好性が明白であるし、どれかが欠けてしまうと
途端に組織は統率力が失われ、求心力が削がれた状態に追いやられる。
しかし、果たしてこれら全てを満たしたリーダーこそが、模範となるべき存在と断言
できるのだろうか?この三要素を満たさずとも、一組織を十分に統轄できる資質は存在
するはずである。
例えば①を例にとってみる。①では、リーダーの積極性の有無が集団の意識に大きく関
係することが示唆されるが、積極的な姿勢に欠けた状態でも集団を引っ張っていくだけ
の組織力は生み出せるはずである。
リーダーが先頭に立ち、他の者を率いることは、リーダーの立場に立てば「自分の意見
をしっかり聞いてくれてる」と主観するかもしれない。しかし、主観はあくまで主観。
率いられる側からすれば、「一人で意見を先走っている」「上から目線」「自分たちの
意見を反映させない」といった、ネガティブな印象を植え付けさせる要因になりかねな
い。
然るべきところでは先頭に立ち、普段は他の者に寄り添い意見をしっかりと聞く。基本
的な所ではあるが、ふと先頭に立つことばかりに思考を支配され、気を配れないリー
ダーになってしまっているかもしれない。
他の二つの要素もみていこう。②では意見を集約させて、一つの結論を編み出そうとし
ている。雑多な考えを一括りにして、意見の煩雑さを取り除くのは大切だが、そのこと
ばかりに囚われると一人の人間の革新的なアイデアを消し去ってしまうことになる。
それぞれの意見に耳を傾けて、それぞれの考えを一つ一つノートなどにメモしていきな
がら改めて整理をしていく。不必要と思える情報の中にも、僅かな有用性の芽が出てい
るかもしれない。その芽を結論の先急ぎで摘み取ってしまうのは、リーダーとして野暮
と言えるかもしれない。
最後に③を見ていく。全体の利益中心的な考えであるが、これだと個々の評価が後回し
にされたり、最悪な場合は評価の対象にすらならない場合もある。リーダーとして信頼
される大きな一歩として、自分自身がどうリーダーに見られているかを知ることは、相
互理解を深める場として非常に大きい。個人個人にしっかり向き合い、全体の(組織な
ど)利益に目先を向ける前に、立ち止まってそれぞれの利益を見出すことが、リーダーと
しても、全体としてもステップアップに繋がっていくのである。
改めてリーダーの資質について考えてみよう。リーダーとは単に集団の表に立って、独
りよがりで意見を組み敷いていくものではない。一人一人に寄り添う姿勢、先頭に立た
ずとも同じ立ち位置で全体の利益を見据えていく。これからリーダーを志す者、一つ心
得ておくと大きな力になるかもしれない。